伊勢河崎ときどき古民家

伊勢と河崎の町と神社と古民家と好きなものに囲まれた日々のコラムです

文系の古民家建築勉強法?

昨日「古民家鑑定士」の試験についての経験をざくっと時系列でお話しました。

今日は、もうちょっと突っ込んだ内容を書いておきたいと思います。

 

ずばりド文系の私が、理系の領域である建築について学んでみて

手こずったこと、理解に苦しんだことなど…についてです。

 

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古民家鑑定士のテキストは、昨日もご紹介しましたこちら↑

川上幸生著「古民家の調査と再築」

発行は「一般社団法人 住まい教育推進協会」で、

古民家鑑定士だけではなく、同協会認定資格の

・伝統再築士

・古材鑑定士

・新民家プランナー

また、一般社団法人 全国古民家再生協会 認定資格

・伝統的構法による木造建築物状況調査技術者

一般社団法人 伝統構法耐震評価機構 認定資格

・伝統耐震診断

のテキストでもあります。

それぞれのチャプターにより使い分けしている構成です。

 

ただのテキストというだけでなく、古民家の専門書としてよく出来ていて

古民家建築や左官に詳しい建築士Kさん(古民家ルーム仲間)が

「古民家について最もまとまっててわかりやすい」と太鼓判を押す本でもあります。

 

確かに古民家の構法を学ぼうとするともっと細分化された著書が多い印象です。

それがこの一冊に基本的に必要な知識を網羅されていて、とても優秀だと思われます。

 

が、あくまでもそれは「建築の知識がそれなりにある場合に限り」と断り書きが必要です。

ド文系、古民家好きとはいえただの素人の私には「?」のオンパレード。

そもそも「この梁立派ですよね~」「この大黒柱もすごい!」なんて会話をしつつも、

梁が家のどの方向に張られてどんな役割をしているかなんて考えたことすらなかったのです。

「梁とは?」と聞かれて私の中にある知識はせいぜい

「屋根を支えてる立派な木材。地面と平行(水平)。立派な古民家では一本の木で通されていて、木材としても価値がある。経年によりぎゅっと目が詰まっていて堅くて丈夫」

くらいの漠然としたものなのですから…。

 

そもそもそんな私が古民家鑑定士の試験なんて受かるのかな?と半信半疑(?)でしたが、

逆に、今まで漠然としていた古民家について学んでみる機会だ!と考えて挑戦することにしたのです。

 

が、(再びの逆説)

テキストを読みだして建築用語に早速手こずりました💦

 

古民家とは、50年以上前に建てられた木造の建物と定義されていて

建築基準法が施行される前の建物を「伝統構法」、以降を「在来工法」ということなど

知識が整理されていくのが気持ちが良かったのですが、

「木造軸組構法」「木造枠組壁工法」など説明を読めばわかる用語はもとより、

「渡りアゴ」「甲乙梁」「折置き組み」「台持ち継ぎ」「登梁」など、自分で調べてみないと何のことやらわからない用語まで

初めて出会う言葉になかなかテキストのページが進まない状態になりました。

 

逐一建築のサイトで調べました。

(昨日ご紹介したサイトです)

 

また、テキスト内の図が常に一方向からばかりなので

「これが梁…梁は水平材…、柱は垂直材、軒は…?貫ってどういうこと?根太ってどういう向きなの?」と

脳内で3D化して考えてみても、それが正しいのかすらわからず。

(ド文系ですが、なぜか立体図形だけ得意なタイプなのですが)

 

「桁は建物の長辺方向に渡される横木であり、短辺方向に渡された横架材は梁という」

と言われても、門外漢には一読しただけではわかりません。
また図を見ながら脳内でその図を回転させてみて…
やはり私のその理解が正しいのかがわからないのでもやもやします。

 

(*一か所だけ斜めの構図もありますが、在来工法のさらっとした図のみです)

 

模型が欲しいところでしたが、斜めからの図も掲載されている本を別途購入しました。

 

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↑こちらは、テキストにさらっとしか書かれていなかった仕口や継ぎ手、小屋組についても詳しく図解されていてオススメです。

在来工法の本なのですが、伝統構法にもつながる内容が多いですね。

(尾上孝一著「図解木造建築入門」井上書院)


こちらの本を見てみてようやく「あってた!」とか「勘違いしてた」ということがわかり、テキストの必要箇所を読破ずることが出来ました。

 

テキスト持ち込みOK試験なので、そこまで細かく理解していなくてもどうにかなるのかな?

とも思いましたが、

もやもやしていることは調べないと気が済まない性質なのと

「せっかくだからちゃんと知りたい」と思った故に、

七面倒な過剰な調べものも多かったと思います。


試験を受けてみて「テキストをザックリ理解で大丈夫」と思いました(笑)。

講習を受けるならば、尚更、多分大丈夫です。

 

逆に講習費を浮かしたいのであれば、テキストを自分で「ほぼ理解した」というくらい読み込んでおけばOKだとも思います。

以上がド文系の私が古民家鑑定士に挑むにあたって感じたことです。

 

ですが最後に、逆に文系だから気付いてしまった誤植もありました💦

(「惣村」に「そうむら」と読み仮名がついていたり。(そうそん〇))

テキストは日本の歴史や文化、環境問題、更には家屋のメンテナンスにも話が及んでいて

改めて伝統構法の良さを確信できるような良書です。

古民家だけではなく、自分の住まいである建物について、いかに無知だったかも思い知らされました。

 

建物をきちんと知っていれば、自分にあった住まい選びにも役立ちますし、

よく来る「屋根大丈夫ですか?」とか「壁の塗り替え時ですよ」という訪問販売にも太刀打ちできるかと思います。
(本当に多いですよね!これを書いてるたった今も「屋根が数枚反り返ってますよ」という不安押し売り商法の人が来ましたよ。おっさんが気付くくらいなら、自分でも気付くわ!)

日本人は古くから伝わる日本独自の建物の良さをもっと知るべきだと思いました、改めて。