【伊勢の寺社】 山田産土八社の御祭神についてまとめてみた件
「山田産土八社」と呼ばれる８つの神社には
「御頭神事」という独特の獅子舞行事があること、
また宝物としてその獅子頭が納められていることが特徴です。
この獅子舞は、スサノオ命がヤマタノオロチを退治した逸話に則って舞われるといいます。
この八社の獅子頭は「山田地方の八頭」とも称されるそうで、
まさにヤマタノオロチそのものですね。
ヤマタノオロチ―蛇は大水や洪水、氾濫する河川の隠喩であると考えられますので、
氾濫の多かった宮川をどうか鎮めてください…という祈りがこめられているのだと推測します。
では、この山田産土八社の主祭神は、スサノオ命なのでしょうか？
…そう簡単ではありませんでした。
以下、まとめです。
・須原大社
正哉吾勝勝速日天忍穗耳尊
（古名；大社）
（古地名；洲原）
・上社
（古名；八王子社 牛頭社）
（古地名；水止野）
・今社
鹿屋野姫命
（古名；井庭社、今村社、今村殿）
（古地名；井庭村、清野）
・坂社
正哉吾勝勝速日天忍穗耳尊
（古名；坂野村社、坂村社、坂村殿、坂殿社）
（古地名；坂野）
・藤社
彦国見賀岐健與束神
（古名；？）
（古地名；？）
・世木神社
天牟羅雲命御玉
（古名；世木社）
（古地名；関川、世木村）
・箕曲中松原神社
大歳神
（古名；大歳社・中松原社・美野社）
（古地名； 美野）
・茜社
天牟羅雲命
（古名；赤畝の社、赤畝明神）
（古地名；赤畝、前野（外宮前））
須原大社、坂社はスサノオの子で「八王子」とも称される
オシホミミ尊が祀られています。
上社も「八王子社」という古名があることから、スサノオ信仰のあったことがうかがえます。
須原大社は自然発生の神社と言われ、
坂社も創建は不明えすが、元々こちらに産土として発生したか、
境内の蛭子神社（八日市の守り神）と共に起こった、当地ならではの神社かと推察できます。
上社と今社は、１２５社に関連する神社でもあるので
（上社は荒廃した摂社を地元民が産土として祀ったといわれ、
今社は清野井庭神社の比推地ともされています。）
木の神や山の神、草（萱）の神という、アニミズム的な神が祀られています。
これは摂末社として祭神が不明となってしまっていたことに起因するかと思います。
摂社・清野井庭神社の御祭神も草野姫（カヤノヒメ）で今社の御祭神と同神です。
茜社と世木神社の天牟羅雲命、
藤社の彦国見賀岐健與束神はいずれも
外宮の祭祀を世襲してきた度会氏に縁の神です。
以上のことから、
山田八社の産土神は、
自然発生した（と思われる）２社と、
元々は神宮に関連する祭祀から創建した６社を
地元の人々が自分達の祭祀に塗り替えていったもの、
と考えることができます。
神宮の祭祀自体が、伊勢ではなく奈良（大和朝廷）発祥のものが
入ってきたものですので（倭姫の逸話として）、
地元に元々別の信仰はあったはずです。
それが伊勢の他の産土の神社にも多いスサノオ信仰であったのか、
それとも前述したように、
スサノオ信仰がちょうど宮川の氾濫などとマッチしていたため取り入れられたのかは、わかりません。
ですが山田産土八社は、旧地名からも明らかなように
宮川の水害が特に多かった地域ともいえます。
それを憂いた山田の人々が救いを求めたのが、スサノオ信仰で、
やはり後から取り入れられたものだと私は想像します。
そして、雨の多少はまた田畑の実りともつながりますので
稲作信仰・太陽信仰であった神宮の祭祀もまた、
スサノオ信仰と同じく根付きやすいものであったのだと思います。
そのため、どちらも並立的に存在しているのではないでしょうか？
神宮が稲作と共にやってきた信仰なのか、
後からマッチングするように大和朝廷が仕掛けた信仰なのかは
謎ではありますが…。
倭姫の辿った道は水分の道でもありますので、
これもまた、川と深くつながることになります。
今、私たちが生活するうえで欠かせない川は、
古代は道であり恵みであり脅威でもあり、
現在以上に大切で必要不可欠なものでありました。
雨の多い今年ですが、
その雨の集まる川の大事さを見直すように
ヤマタノオロチが怒り狂っているのか、
スサノオ命かはたまたアマテラス大神が
天上から警告しているのかもしれませんね。
やはり、地球においての水は大事です。
なんといっても「水の惑星」ですからね。
ですから、リニアも静岡の水脈を侵してまで作らなくていいのに…と思っています。（超余談）
