伊勢河崎ときどき古民家

伊勢と河崎の町と神社と古民家と好きなものに囲まれた日々のコラムです

伊勢で見つけたなんじゃこりゃ?②伊勢春慶の何かの入れ物

私が河崎でお借りしていたN邸は明治末から建つ古民家。
お家の中にはN家に伝わるお品も色々とあり、
河崎の古き良き暮らしを表現したくて、一部はお借りして使わせていただいていました。

 

その中の一品。

これ、何だかおわかりになりますか?

 

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何だかとってもモダンなデザイン。
切り込みも入っているし、大きさ的にも…これはボックスティッシュケースか?

 

伊勢には「伊勢春慶」という独特の漆工芸品があり、
その伝統を継承させるべく河崎に工房もあります。
その伊勢春慶だというのはすぐにわかったのですが、

用途がある特別な「何か」だとは思いもよりませんでした。

 

河崎を知り尽くす学者のC氏がカフェに遊びに来てくれた日のこと。
この春慶の箱を見て、「これって、何だかわかります?」とにんまり。

 

その場にいた一同で首を傾げると、C氏、さらににんまりと御満悦顔でお答えをくれました。

 

「魚を入れるんですよ。」

 

!?
魚専用BOX!???

 

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↑イメージです。(笑)

 

御近所などに贈答にお魚を差し上げる時に使われていた専用の物で、

蓋と左右に開けられた切込みは、魚が傷まないように風通しをよくするためだそう。

 

モダンなティッシュケースどころか、これは大正頃の古いものとのこと。

あまりに状態がいいので、戦後の比較的最近の物だと思っていました。

魚を入れるのでもっと状態が悪いものが多いらしく、レア物だそうです。

 

こんなオシャレに魚が入れられていたなんて、昔の人は風雅ですよね。

 

時代は春慶に入れられる押印でわかるそうです。

英国アンティークのシルバー製品もよく刻印で時代を見分けます。

やはりそういう印って大事ですよね。

 

ちなみにC氏、春慶の研究展示会に協力した折に

この押印の種類を研究したこともあるそうで、それでこんなに詳しいのだそう。

 

伊勢春慶は、神宮の工匠が室町期に始めたとも、
戦国時代に蒲生氏が松阪に入城した際に連れてきた漆職人が発祥とも言われています。

 

普段使いの漆器で、檜に柿渋かベンガラを塗り、
そこに漆を1度だけかけたものなので木目が見られるのが特徴です。
高級漆器との違いは箱物の角の木の組み込みが平易であることにも現れています。

現在もお店のお膳で使われていたり、あちこちでその活躍は目にすることが出来ます。

 

河崎の工房に見学がしたい時には事前にお問い合わせを。
フォトフレームなどモダンなアイテムも最近は手掛けていますよ。

 

www.ise-shunkei.com